
さて本日は先週に引き続き、私が若い頃商社に勤めていたときの話です。私はアメリカ西海岸に本社を持つ小さな半導体テスト機器メーカーの担当となり、その後頻繁にその会社に海外出張をしていました。
そして海外出張中のとある土曜日、朝のコーヒーをいただいていると、社長が読んでいた新聞広告のひとつに目がとまり溜息混じりのひとこと。
「こんなの誰が買うんだろうねぇ~」と。
広告記事には ”Town for Sale" の文字。つまり『町売ります』という広告。価格は3億円。私は後日実際にその物件を一度だけ訪問する機会に恵まれますが、イメージは以下のような感じ。場所はカリフォルニア州サンフランシスコの海岸。
この写真では砂浜に家は建っていませんが、実際には10軒くらいのアメリカ風の家が等間隔で砂浜の上に立ち並んでいました。砂浜すべてとその背後に佇む山の頂上までが所有権を有する土地と聞きました。

ちなみにこの海岸は完全に山に囲まれていて、山の背後の駐車場までは車で入れるものの、そこからは徒歩で海岸に降りるしかありません。そのため大規模開発は行われず、のどかな海岸が残されてきました。
そしてこの物件を手に入れた人物はというと、社長がテスト機器メーカーを起業するまで勤めていた会社の元同僚でした!
背景を聞いてみると、この土地の所有者が亡くなり、相続したのはその奥さんと娘さん。でもその二人でとてもこの規模の物件を維持管理していくことはできない。そこで売りに出したそうです。
故人の遺言で、もし売るなら海岸の自然を壊すことのないよう、大規模開発でホテルを建てたりとか、そういうことを行わない、信頼できる人物に売って欲しいとのことでした。結果、この物件を手にしたのは社長がサラリーマン時代に親しくしていた元同僚。
彼の招待で、海外出張中の休日のある日、その海岸を訪れました。10軒ほどある家のいくつかには旅行客が滞在中で、彼は当時仕事はやめ、壊れた家をあちこち修繕しながら宿を運営しているとのことでした。
余談ですが、購入価格は大幅に値引きしてもらったそうです。最優先は故人の遺志を確実に守ってもらうこと。お金の問題じゃない。
今思えば、私が脱サラして『空き家再生ドットコム』を設立したのも少なからず彼の影響があったかも知れません(笑)。
次回更新は10月20日火曜日の予定です。